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2006年1月 4日

金春流「翁」の「十二月往来」をTVで観て

3が日はTVとラジオで能・狂言を楽しみましたが,中でも面白かったのは,1日のETVで見た金春流の能「翁(おきな)」(翁/父尉:金春安明)でした.年末のにゅーすで紹介した通り,「十二月往来(じゅうにつきおうらい)」「父尉・延命冠者(ちちのじょう・えんめいかじゃ)」の小書(特殊演出)がついたものです.

「十二月往来」では,「かかるめでたきみぎんには 十二月の往来こそめでとう候え」ということで,シテの翁が月々の風物を挙げ,ツレの翁2人がその心を謡い応答していました.

シテ「正月の松の風」
ツレ「君のことを調べたり」
シテ「二月の燕」
ツレ「よわいよわいをはやめたり」
シテ「三月の霞」
ツレ「四方の山にたなびく」
(仮名遣いはTVのテロップに準拠)

この調子で12月まで続きました.私には大意がつかめない点がいくつかあるものの,日本の四季折々の美しさがコンパクトに織り込まれた,おもむきのある詞章のように感じられました.

そして,これが金春流で謡われたというのが,またよかったです.私はシテ方五流の謡い方を聞き分けられるほどの耳は持ち合わせていませんが,金春流だけは他の四流との区別がつけられるようになってきました.私は金春流の謡を生で聴いたことがありませんから,TVとラジオを通じての印象を書きますと,朗々と響き渡るような力強さや華やかさは,他の流儀ほどには感じられない.代わりに,地の底に沈潜していたものがジワリと湧き上がるような,閑かなうちにも何ものかがうごめいているような気配をおぼえます.そのためにかえって,「十二月往来」のような牧歌的な詞章がしっくりと来るように思えるのです.

金春流の謡に対するそうした印象は,今回のシテの翁を演じた金春安明さんについて,とりわけ強くしていたところでした(そのあたりのことは,いずれ別の機会に).それだけに元日の朝の「十二月往来」は,私のツボに見事にはまりました.

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コメント

Dear Tanuki Boya,

まずは新年おめでとう!そしてお誕生日おめでとう!Mozartと同じ誕生日なんですね。

私はCaliforniaに住んではや25年、かるーくあなたの母親になれる年のおばんです。

NHKの翁を観て、十二月往来の季節感に感動しネット上で資料を調べていたら、あなたのページに入りました。三月の霞ーー四方の山にたなびく、、、など枕草子も連想させとてもたのしみました。お能は東京に住んでいる親友が去年の十一月に黒塚を演じたのを観てひどく感激して以来観始めたというまったくの素人です。

こんなページがあって、これからも読み物として楽しめそうなので、お礼がてらお便りしました。

お元気で!

JudyHayama

Judy Hayamaさん,コメントと誕生日のお祝いありがとうございます.このところ仕事が忙しく,コメントを見逃していました.お許し下さい.

「十二月往来」は,おっしゃる通り「春はあけぼの」を彷彿とさせますね.作者は「枕草子」を意識していたのではと思えてきます.

能には季節の定まった曲が多くありますから,折々にふさわしい能を見たり,謡曲を読んだりするのも楽しいですよ.今の時期は雪にちなんで,北条時頼の伝説で知られる「鉢木(はちのき)」など,私は好きですね.

タヌキにゅーすは,基本的に「石ちゃん語」という得体の知れない言葉(笑)で書いていますが,少なくとも能の話題は普通の日本語で記す方針ですから,比較的読みやすいと思います.今後ともお立ち寄り下さい.