« iTunes 9 | メイン | よくある質問:松江には毎週通っているのですか? »

2009年9月11日

八雲会の講座「小泉八雲をよもう2009」初日

先日御紹介した八雲会の講座「小泉八雲をよもう2009」は今日が第1回でした。昨年に引き続く「怪談」「奇談」のシリーズで、今回は「青柳のはなし(The Story of Aoyagi)」(『怪談(Kwaidan)』)と「いつもあること(The Matter of Custom)」(『骨董(Kotto)』)を読みました。

このうち「青柳のはなし」は、大名の使者として都へ向かう友忠という若い武士が、柳が生えた丘にある家に宿を借り、老夫婦とその娘の青柳に出会うところから始まる、劇的な展開を持つ恋物語です。

その中盤、小泉八雲自身が「日本の原作では、物語の自然な進行に変な破綻」(田村三千稔訳)があると、わざわざ本文中でことわっているのが目をひきます。ここからが八雲ならではの再話の工夫がうかがえるところで、「青柳のはなし」のもとになった物語=原話(元禄年間の浮世草子『玉すだれ』所収の「柳情霊妖」)にはない設定(友忠が遣わされた細川侯が美人好きとされ、物語後半の伏線に)や、西洋の読者を意識した解説的な話の進め方(武士の結婚には主君の許しが必要であるという解説。これも重要な伏線)など、原話の書き換えの妙が随所にあらわれ、今日でも面白く読める物語に仕上がっている......ということが、原話との比較や先行研究を踏まえて読み解かれていきました。

原話を語り直すことによって生まれる再話文学の手法において、八雲やその協力者であった妻セツの果たした役割の大きさを感じさせる第1回でした。講座は来年2月まで月1回開かれます。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://ishikawakiyoharu.info/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/664