「絵図の世界:出雲国・隠岐国・桑原文庫の絵図」に行く[2]
(昨日の報告とは異なる視点から見た展示会の感想を,別のメイリング・リストに投稿しました.文面の一部を改変して下記に掲載します)
私が島根大学に在籍していたのは2003年9月まででしたが,当時は附属図書館の所蔵資料を展示公開する機会というものはなかったはずです.最近は,研究プロジェクトの進展や,昨年の歴史地理学会松江大会,大学法人化に伴う新たな取り組みの要請……など,さまざまな背景があるのでしょうが,こうして所蔵資料が一般市民の目にも触れる形で活用される機会が増えたことは好ましい傾向であると思います.
学生による展示説明会が行われたのも結構なことです.私の在籍時には,教員と学生が共同で一般向けの行事に参画することがありませんでした.そういう機会があれば学生にとってもよい勉強になるだろうとは考えていたのですが,具体的な構想を持つには至りませんでした.
図録とともに講演会の記録も出版されるのもうれしいです.所用で聴講できなかったため,誰か活字化して世に出してくれないものかと思っていた折節の朗報.“個人的事情”はさておいても,記録を残し公開することも大事ですよね.
貴重資料をディジタル・コンテンツ化して公開するという流れについては,'90年代後半のインターネットやPC,ディジタル・カメラの急速な普及を目の当たりにしつつ,先生方や学生と話題にしたものでした.ようやくここ数年,日本の歴史学界でも多くの成果物が現れてきたように見受けられます,前者の「貴重図書デジタルアーカイブス」は,スライダーの所在が,スペースの細長さや周囲の色との近似のため気づきにくかったものの,全体として操作がシンプルで覚えやすかったです.1年前,島根県立美術館のコレクション展で,IAMASが開発した「洛中洛外図屏風」の精細画像によるディジタル・コンテンツを見た際にも感じたのですが,実物の資料ではむやみに顔を近づけて見るわけにはいかなくとも,ディジタル化したものはそのあたりの気兼ねが少ない点ひとつとっても便利です.