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2005年11月14日

TVで能楽鑑賞

昨日のラジオに続いて,今日はTVでの能楽鑑賞の話です.

おとといの午後は,ETVで,観世流の能「定家(ていか)」(シテ:浅見真州)を見ていました.放送時間は2時間.能楽研究者による10分余の解説に続いて,時間までたっぷり演能が放送されました.

近年ETVでは,2か月に1回程度,土曜日の午後に1時間半から2時間,能楽の舞台の模様を見ることができますが,私が小・中学生の時分,1980年代から1990年代初めにかけては,祝日の午前中に1時間程度放送されるのが常でした.放送の日数は明らかに今の方が少ないわけですが,1回あたりの放送時間が延びたことで,「定家」のように上演時間が2時間近くに達する曲も,ノー・カットで愉しめるようになったのではないかと思います.しかも,時間に余裕があれば演者のインタヴューや,一調・一管といった短いプログラムも入ることがありますから,ちょっとしたお得感も得られます.

正月3が日には,やはりETVで『新春能狂言』の放送が毎日あります.これは今でも1時間の番組で,放送時間の都合上,前シテが中入して,後シテが出るまでをつなぐ間狂言(あいきょうげん)が,しばしば尊い犠牲となります(爆).そうは言いながら,私にとってはNHK-FMの『新春謡曲狂言』とともに,三が日の大きな愉しみです.

さて,家族に謡曲を習う者がいるわけでもなく,能楽とはまるで縁のない家庭に育った私にとって,TVは能楽との数少ない接点でした.

かつて能楽番組を放送した祝日の午前中という時間帯は,(今でもそうですが)平日であれば学校教育番組の時間です.しかし,学校ではチャンネル権を先生に独占されているため,“ノッポさん”とか“クラさん”とか“チョーさん”が出てくる番組を,自由に見ることはかないません.その点休日は,朝から好きな番組を見られるチャンスということで,9時ごろETVにチャンネルを合わせるわけです.

ところが,画面に映るのは“ノッポさん”でも“クラさん”でも“チョーさん”でもなく,大きな松が描かれた板をバックに,仮面をつけた着物の人たちが現れて何かしています.仮面の人たちの後ろでは,ヨーとかホーとか言いながら,丸い板のようなものを叩く人が約2名.舞台の脇には黒い服を着た何人ものオッサンたちが,低い声で耳慣れないメロディーを歌っています.歌っている文句が字幕に映し出されているものの,意味がサッパリわからない.

「ニャ~ンダ,ノッポさんも休みなのか」

能の映像を初めて見たときの印象は,実はこんな程度のものでした.この世に能というものがあることは,小学校に入るか入らないかといった時期に早くも,我が家にある日本語辞典の口絵で見て知っていましたが,“ノッポさん”たちを見られなかった怨みが相当強かったのか(笑),能に興味を持つまでには至りませんでした.

そんな私も,やがては祝日の能楽番組を心待ちにする風変わりな小学生へと化けていくことになるのですが,それは本との出会いを抜きに語ることはできせん.後日改めての話題としましょう.

(「本から始める能楽鑑賞[仮題]」につづく)

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