神楽のシンポジウムに行く
先日タヌキにゅーすで紹介した「神楽:神々の舞・誕生の謎に迫る(第5回神在月古代文化シンポジウム)」に行ってきました.
神楽は小学生のころ,近所のお寺の祭礼で石見神楽を見たほかは,本の写真やTVで出雲神楽をチラッと見かけた程度です.いずれもスサノヲノミコトのヤマタノオロチ退治を扱った神話劇でした.そのため,神楽というのは出雲神話に取材して演じられる藝能だとばかり思っていたのですが,とんでもない勘違いでした.
演者が仮面と装束をつけて物語の登場人物に扮して演劇を繰り広げるのも,出雲神話をもとにした演目を上演することも,能楽の能の影響下で成立したということ.島根県内では地元の神話に基づく演目の上演が多いけれども,広島県の芸北地方では,同じ能の影響でも「紅葉狩」などの神話とは関係のない鬼退治の神楽が盛んに上演されるなど,ひとくちに「神楽」といっても地域ごとの特徴がある…….
学界では定説なのでしょうけれども,地元の神話をもとにした地元の神楽しか知らなかった私には,初めて知ることばかりでした.
ところで,小田幸子さん(東京都文化財研究所)が能楽研究の立場から,廃絶曲や上演記録のみが伝わる演目をを含めて,出雲を舞台とした能の紹介がありました.現行曲の「大蛇(おろち)」と同じくオロチ退治を扱った廃絶曲に「神有月(かみありづき)」があるそうです.これは「大蛇」が現在進行形で物語が進むのに対し,神社(ここでは出雲大社)に参詣した大臣の前に祭神(スサノヲノミコト)たちがあらわれ,神話を再現して見せるという,脇能らしさたっぷりの形式だとか.せめて詞章の読み比べて,地元神楽でおなじみの題材が,能ではどのように演じられたのか,深く知りたいところです.