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2005年10月16日

松江松聲会の能楽入門講座

先日紹介しました松江松聲会の発表会に行きました.時間の都合で能楽体験講座だけ聴いてきました.

同会を指導する井上裕久さん(観世流シテ方)のお話は,昨年の講座と同じく,能とは何か/能の歴史→能の面と装束→装束つけと舞の実演といった流れでしたが,例に挙げた面と装束が,昨年は女性の役ものだったのに対し,今年は大河ドラマ「義経」にちなむとかで,修羅物の武将の役のものでした.

修羅物の武将は,源氏と平氏にほぼ二分されます(「田村」の坂上田村麿のような例外もありますが).烏帽子(えぼし)の折り方の違いで,源氏方(左折り)と平氏方(右折り)の見分けがつくことは知っていましたが,実はそれ以外にも装束つけで差別化を図っているのだそうです.

お話を簡単にまとめると,図のような感じになります.

修羅物の武将の装束づけの違い
  源氏 平氏
烏帽子の折り方 左折り 右折り
平太 中将
扇面の絵柄 日の出 日の入り
小袖 厚板 縫箔(ぬいはく)
平切(ひらぎれ) 大口
法被(はっぴ) 袷(あわせ)の法被 長絹(ちょうけん)
または単(ひとえ)の法被
腰帯 白地に黒の紋 刺繍の紋

流儀や演目,演出などにもよるのでしょうが,源氏方は荒々しい坂東武者らしさ,平家方は公達(きんだち)と呼ばれただけに繊細優美なさまを表現するために,細かなところにまで工夫をしているようです.能を見る上での楽しみが,またひとつ増えました.

他のシテ方をモデルに装束づけの実演ののち,そのまま「八島(やしま)」の義経の舞の一部が披露されました.源氏の大将だけに豪壮な舞で,正中(しょうなか:舞台中央)から脇座前にググンと迫ってきたのには,最前列の脇柱前(舞台下手前方の柱)に座っていた私,ビビリました(笑).これは前列で見る者だからこそ味わえる特権ですよ,きっと.

続いて笛方と太鼓方を迎えて囃子の解説に移り,笛と太鼓を実際に.私は笛を吹いてみましたが,ほとんど音が出ませんでした(シクシク).よほど息が足りなかったのでしょうか?? 同じく笛を体験したうちに上手な方がいらっしゃって,何ともうらやましい限りでした.

追記

講座の直前,白い着物に黒い帯,ストレイト・ヘアが爆発したような髪型のオバサマが,私の前を通り過ぎていきました.何かに似てるな~って思ってたら,茂山千五郎家で見た狂言「武悪(ぶあく)」の,武悪の幽霊そっくりでした.こんな感じです→(神田雑学大学).ビックリはしましたが,謡曲・仕舞の会だけに,違和感がありませんでした.まちかどで会ったら,さすがにおっかないことでしょうが…….

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