黒川紀章追悼企画ということで,訪ねた作品の写真があれば……と思っていましたが,案外なくて.
唯一出てきた写真が,ちょうど1年前に東京・表参道で通りかかった《日本看護協会ビル》(2004).
一面のガラス張りに円錐状のタワーが埋め込まれるという,ソリッドなファサードなのですが,通りから少し引いたところに建物があるため,この写真で見るほどの威圧感はなかったです.
このとき内部には入る時間がなかったのですが,1階と2階は各種店舗や看護に関する展示場といった公開の施設が入居していて,「協会の建物」という面構えはなく,普通に表参道のお店という風体でした.
唯一ちゃんと見たのは,1997年に「ル・コルビュジエ展」のために出かけた《広島市現代美術館》(1989)くらいです.市街地の小高い丘を上ると,緑に囲まれて見えるのは,円形の広場を軸にして連なるアルミニウムの土蔵のような建物.樹木と金属,曲線と直線の対峙あるいは融合が見どころ.展示を見るにつれて,だんだん地下に潜っていったような記憶があります.
あとは数年前に大阪・御堂筋の《国立文楽劇場》(1984)通り過ぎたくらいです.《国立文楽劇場》は,今まで中に入ったことがないのがフシギなくらいですが,いずれ文楽ともども建物もしっかり見に行くことになるでしょう.
それから,これは実際には建てられなかったのですが,《京都駅ビル》の指名設計競技案(1991)も印象に残っています.京都という土地柄,羅城門をモティーフにした案が,他者の案にもいくつか見られたのですが,黒川案は高さが121mと,駅正面の《京都タワー》の131mに迫る勢いで,さながら巨大な凱旋門.その量感が京都の玄関口にふさわしいかどうかの議論は別にして,記念碑的な造型としては圧倒的な迫力がありました(あくまで模型の写真を見た印象ですが).