2006年2月22日

「2006年 松江・能を知る集い」のデザイン[1]

松江・能を知る集い」は,全国さらには海外の各地で頻繁に催されているであろう能のワークショップの中でも,異色の存在なのかも知れません.

まず,面や装束をつけてみようだとか,囃子方の楽器に触ってみようだとかいった話が出たことはありません.また,謡の一節を取り出してお稽古の体験,みたいなこともありません.

過去2回の「能を知る集い」では,「能の身体感覚」がテーマになりました.例えば,分業制をとっている能楽師たちが一堂に会するとき,どのように呼吸を合わせてひとつの舞台を作っているのか,という視点から,鼓を打つ際の掛け声を出しました.床を区切っただけの能舞台に,参加者を地謡,囃子方,後見,ワキ方,観客として配置し,その中をシテ方の役をする参加者が歩き,四方を多くの人に囲まれる能の舞台空間を体験したこともあります.そのほか「ノイズを含む声」「歩行と呼吸の関係」……など,まさに「体で感じる能の世界」(当時のチラシのコピーより).槻宅聡さんと安田登さんの紋付姿を除くと,誰の目にも明らかに能のワークショップ,あるいは“日本の伝統ナントカ”と見える要素は,ほとんど登場しません.

それだけに,「能を知る集い」のイメイジを広告として視覚化する作業は,他の能関係の催しの広告をデザインするほど容易なものではありません.能面や演能の写真をポンと配置して,「幽玄の世界」云々と陳腐な常套句を毛筆系の書体で組むといった“ごまかし”が利かないのです.ありきたりな方法で“日本の伝統ナントカ”を強調しようとしても,「体で感じる能の世界」は,時代を超えて現代に生きる藝術,すなわち本来の意味における“古典”としての能を映し出しているのですから.

「能を知る集い」の広告では一貫して,

  • 使い古された言葉としての“日本の伝統ナントカ”を離れること
  • 私たち現代人が参加して大きな喜びを得られること

をデザインの主題に据えてきました.そのことが,石原まゆみさんのイラストレイションの使用と,現代的な表情を持つ明朝体とゴシック体を中心とするタイポグラフィへとつながっているわけです.

2006年2月21日

プリエールフェスティバルで「しまね子どもをたばこから守る会」のロゴがデビュー

私が会員のひとりとして末席に名を連ねる「しまね子どもをたばこから守る会」という団体のロゴ・マークのデザインを手がけました.25日の「プリエールフェスティバル2006」(松江市)のワークショップ(10:00-15:00)に出展する同会のブースが,そのお披露目の場となります.

受動喫煙の防止義務を定めた条項を盛り込む健康増進法の施行による大きな節目を経た,タバコ問題への取り組みについて,今後のあり方をロゴ・マークによって提案しています.松江にお住まいの方,お出かけの方は,ぜひお立ち寄り下さい.

プリエールフェスティバル2006

日時
2月25日(土)10:00-19:40
「しまね子どもをたばこから守る会」が出展するワークショップは10:00-15:00
場所
STICビル(松江市白潟本町)
主催
プリエールねっと
プリエールフェスティバル2006実行委員会
共催
松江市
問い合わせ先
松江市男女共同参画センター
詳細
http://www.city.matsue.shimane.jp/jumin/shisei/kouhou/shihou_matsue/1802/event.htm

2006年2月20日

2006年 松江・能を知る集い

チラシの画像

私が広告デザインを担当している「松江・能を知る集い」は3年目を迎えました.

今回は,1曲の能がどのようにできているかを,「かたり・せりふ」と「はやし」,あるいは「ことば」と「音」を通じて体験するという内容です.

江戸時代以降の能は,決まった曲目が繰り返し上演されるのが常になりましたが,観阿弥や世阿弥が活躍した室町時代には,観客の求めや時代の要請に応じて,新作の能が次々と生み出されました.そうした時代の能楽師の営みの一端を追体験できるのが,今年の「能を知る集い」ではないかと思います.

今年も講師として槻宅さんや安田登さんがいらっしゃいますが,この顔ぶれ抜きにしては考えられないような企画でしょう.

デザインの話は,日を改めて.

日時
3月5日(日)10:00-17:00
会場
松江市総合文化センター(松江市)
講師
水野ゆふ(舞台俳優)
安田登(下掛宝生流ワキ方)
槻宅聡(森田流笛方/安来市出身)
内容
1. 「かたりとせりふ」ワークショップ
2. 「はやし」ワークショップ
3. 全体パフォーマンス(全員参加)
入場料
無料
定員
70名
主催
松江市
申し込み・問い合わせ先
松江市観光振興部観光文化振興課
電話:0852-55-5293
応募締切
2月28日(火)必着

2006年2月19日

島根広告賞の出品パネル[2]これが今年のパネルだ

展示会場で撮影したパネルの写真

今日ようやく島根広告賞の展示に行くことができました.お出かけ報告して下さった方も,現地で偶然お目にかかった方もいらっしゃいますが,足を運んで下さったみなさん,ありがとうございました.

上の写真は,展示会場で撮影したものです.上段2枚,下段1枚のパネルが架かっています.

ところが実は,この3枚の標準的な掲出方法として意図したのは,3枚を横1列に並べるというものでした.下の画像のような具合に.背景が3枚で連続しているのです.

「春の夜の夢」パネル3枚を横1列に並べた状態の画像

もっとも,会場の都合により,明らかに多くの場所を占有するような掲出が実現する可能性は低いと見ていましたので,今回の掲出に関しては,まあこんなものだろうと思います.後日別の機会に,3枚横1列に展示してお目にかけるとしましょう.

パネルの背景には,前回出品分と同様,広告の一部をコラージュしたものを印刷しました.広告では斜めに傾けていたものを真っ直ぐにしたり,ポスターには本物のチラシを貼り付けていることを図解したりといった「種明かし」をしながら,広告とはひと味違った「星空」を描きました.

B2判パネル3枚それぞれに,B4判の紙に出力した背景の「台紙」を4枚並べて貼り付けました.B4判の紙は全部で12枚.1枚として同じ図柄はありません.しかもすべてをつなぎ合わせたときに1枚の「絵」が現れるように作ってあるのですから,誤差がほとんど出ないように貼り合わせていかなければなりません.この作業には,正確な切り貼りの技術と集中力が必要なのです.

私は前回の島根広告賞に当たって,同様の手法でB3判パネルを2枚作りました.2枚のサイズを合計すると,B2判パネル1枚分に相当します.単純に計算すると,今回のパネル製作には,前回の3倍もの労力がかかることになります.

前回は私の狭い自宅に,ひとりでパネルを作りましたが,幸いにして今回は「春の夜の夢」の実行委員会に,所員総出で参加した建築設計事務所の協力を得ました.作業場所に恵まれた上,ふたりの所員と手分けして効率よく,前回より大きな判型,かつ多くの枚数を作ることができました.しかも,建築設計事務所の所員ですから,精密さを求められる作業はお手のもの.頭の下がる思いしきりでありました.

そうした労作ですから,島根広告賞に限るのではなく,いずれの折にか再びみなさんに御覧いただく機会を設けたいもの.そうすることで,協力して下さったみなさんに,多少なりとも報いることができればと願っています.

2006年2月18日

島根広告賞の出品パネル[1]特製パネルの理由

先日も書きましたように,第30回島根広告賞の作品展示が明日19日まで,島根県立美術館ギャラリーで開催されています.

私は昨年に続いて2回目の出品.今年は「春の夜の夢:薩摩琵琶と朗読の夕べ」を取り上げました.前回同様,出品のためにこしらえた特製のパネルに,広告作品貼った状態で御覧いただいている……はずです.「はず」と言いましたのは,単に私がまだ見に行っていないというだけのことでして.

特製パネルの写真をwebで公開するのは,展示終了後のお楽しみ(?)ということにしますが,作り方は前回分のパネルと同じです.まず,コンピューター上で広告作品の一部をコラージュして「台紙」を作ります.この過程ですでに,広告作品を貼る位置を,誤差がほとんど出ないように指定しています.そして,台紙をパネルに貼り,その上に広告作品を指定の位置に貼って,ハイできあがり.

袖珍翡翠記パネルの画像

2005年松江・能を知る集いパネルの画像

画像:第29回島根広告賞の出品パネル(2005年)

島根出品賞の多くの部門では,パネルに広告作品を貼って搬入するよう,募集要項に定めてありますので,展示会場には毎年,おびただしい数のパネルが掲出されます.しかし,私が出品するパネルのように,背景に何やらプリントしてあるようなものは,ほかにありません.今年もきっとそうでしょう.ことごとく,黒や白といった無地1色の背景に,広告作品が貼ってあるはずです.

「島根広告賞」と言うからには,パネルの背景にゴチャゴチャした小細工などせず,純粋に広告作品だけを見せるようにして,審査委員による審査を仰ぐというのが,まっとうな搬入のあり方だと思います.どれだけパネルに手を入れたところで,審査には何の影響はないはずであり,審査する側にしてみれば,目障りですらあるかも知れません.

自身そのように考えているにもかかわらず,あえてパネルに手を加えるのには,いくつか理由があるのですが,ここにはふたつを記しておきます.

最大の理由は,賞の有無にかかわらず,すべての出品作について,作品展示の場が均しく用意されていることにあります.その限りにおいて,私としては審査委員ではなく作品展示の来場者にこそ,出品作をアピールしたい.

しかしながら出品作は多くの場合,すでに使命を終えた作品です.私のように広告業界に足の指が2,3本入った者にとっては,過去の広告作品であっても,見ていて充分楽しめるのですが,たまたま会場に足を踏み入れた来場者,あるいは広告主をはじめとする個々の広告の関係者や,個々の広告を見たり手に取ったりしたことがある人たちにとってはどうか? 旧作を見せられているという「退屈さ」は,どうしてもつきまとってしまうのではないでしょうか,残念ながら.

これが島根県立美術館の特別展の広告のように,ポスターやチラシ,何種類もの入場券,数々の関聨企画のパンフレット,果てはディスプレイやタペストリーという具合に,一個人ですべてのアイテムを目にすることすら困難なほど,大規模なプロジェクトであれば,それらが一堂に会しているだけで,相当見応えがある展示になることでしょう.しかしながら私の出品作は,そこまで大がかりなものは今のところありません.「春の夜の夢」は,チラシ,ポスター,入場券,スタッフ証,プログラムと,過去の出品作のうちでは突出してアイテムが多かったのですが,それでもひとりで見尽くせる程度の種類.

では,島根広告賞の作品展示に足を運ぶことで初めて得られる「附加価値」を用意してみたらどうだろうか? そうすれば,より多くの人たちに,自分たちの仕事を知ってもらったり,また広く広告文化に関心を持ってもらえるのではないか? ……といったことを考えるようになりました.その結果として思い浮かんだのが,特製パネルの構想だったのです.

もっとも,島根広告賞の出品作品が,広告業界内部だけで展観されるのでしたら,パネルに凝ることはなかったでしょうし,そもそも出品すらしなかったかも知れません.広告は,不特定多数の人に見られてナンボのものですから,業界向けにアピールしたところで,面白くも何ともないのです.

加えて,作品展示の場は,広告作品だけではなく,広告する内容を改めて知ってもらう場にもなり得るはず.広告第2弾を打ったり,事業報告を提出したりするつもりで,出品している側面もあります.

もうひとつの理由.特製パネルを作るということは,私にしてみれば新作を手がけることにもなります.つまり自分の鍛錬の場にもなるという点で,私自身にも意義があるのです.

2006年2月17日

「殿町オトノマチ」のデザイン

チラシを3分の1に折った場合の画像

今度の土日,18-19日が「殿町オトノマチ」の2日目,3日目ということで,そのデザインの話題を少々.

石川陽春デザインワークス」に,すでに解説を載せましたから,あわせて御覧下さい.

昨日のにゅーすの中で,私はテクストからデザインを発想することが多いと書きましたが,「殿町オトノマチ」はまさにその好例です.

クライアントから当初伝えられた催しの名称は,すべてカタカナの「トノマチオトノマチ」でした.「殿町=トノマチ」に「オ」の1字を加えるだけで,「音の街=オトノマチ」に変化することを言い表した,豊かな内容を持つ名前です.どなたが考案したのかは聞いていませんが,これほど面白いネイミングには,なかなかお目にかかれるものではありません.

「だんご三兄弟」のヒットで知られる佐藤雅彦さんが手がけるETVの『ピタゴラスイッチ』という“幼児向け番組”(ということになっているらしい)から生まれた歌に,「…の中をよく見たら」(作詞:桑原永江)があります.

カバンのなかを
よくみたら カバがいる

レイゾウコのなかを
よくみたら ゾウがいる

という具合に,ひとつの単語の中に別の単語を見つけていくのが,その歌の歌詞です.これと同じ味わいを,「トノマチオトノマチ」に感じました.

最終的には,正式名称は「殿町オトノマチ」となりました.トノマチを漢字にすることで,開催地がひと目でわかるようになったとはいえ,名称が本来持っている言葉遊びの妙味は,やはりかな表記だからこそ伝わるもの.カタカナの「トノマチオトノマチ」は,ロゴあるいはコピーの扱いとしてしっかり残すこととしました.

今回のデザインに関しては,音符チョンマゲの「オトノサマ」が私の周囲で評判になっていまして,うれしい限りです.以前から私の目には,八分音符や四分音符がチョンマゲに見えて仕方なかったため(笑),いつかそれを形にしたいと思っていましたところ,まさに今回,最もふさわしい舞台を用意されたのでした.

2005年の年賀状の画像

「オトノサマ」は私が描いたもので,2005年の年賀状と同様,円を中心とする単純な図形の組み合わせで成り立っています.

先日,このチラシを御覧になった方から,「佐藤雅彦風」という感想を聞いたときは,てっきり「トノマチオトノマチ」という言葉遊びのことかと思いましたが,改めてチラシを見ますと,「オトノサマ」の表情が,佐藤さんのロングラン・ヒットとなった「バザールでござーる」に似ているような気がしてきました.口もとだけで,うっすらと笑っているあたりです.「オトノサマ」のモデルは江戸時代の武士がモデルですから,あまりニコニコさせてはいけない.しかし楽しげな雰囲気は出したい.そう考えた結果が,あの口となりました.

2006年2月16日

『テレポート山陰』に「どこでもバスブック」シリーズ

『どこでもバスブック松江』5号の表紙の画像

このところ,地元のニュース映像に私がデザインした「殿町オトノマチ」のチラシ(厳密に言えば,その多くは主催者が自前の設備で拡大コピーしたもの)がたびたび登場しましたが,今日はBSS『テレポート山陰』で,「どこでもバスブック」シリーズの特輯を組んでいました.

表紙のデザインを担当した「松江」5号(2005)のほか,近日発売の「松江」6号の表紙見本,さらに現在準備している「島根旅案内」の表紙見本と本文デザイン案まで,大きく映し出されてビックリしました(笑).「いやん,はずかしわ~ん」な気分です(ナンノコッチャ).

「島根旅案内」は,番組で紹介していた通り,島根県内全域の観光地を,公共交通によるアクセス方法とあわせて紹介する1冊です.私は表紙のほか,「どこでもバスブック」シリーズでは初めて,本文のデザインも担当します.表紙は画面に登場したものが,ほぼそのまま使われることになりそうです.本文のデザインもほぼ固まっていますが,最終的には観光地紹介ごとに写真が1点ずつ入ります.文字と地図だけの本にはなりませんので,『テレポート山陰』を御覧になったみなさんは御安心のほどを(笑).

ちなみに「島根旅案内」という名称は,デザイン案を練るに当たって私がつけた仮題でしたが,ここまで大きく取り上げられた以上は,正式採用になりそうですね.私はテクストからデザインを発想することが多いため,必要に応じて仮のタイトルやコピーを自分で考えます.デザインのテーマを咀嚼するには,コピーを書くことが有効な手段になるのではないかと思います.中には思わぬ御褒美で,「春の夜の夢」(「春の夜の夢:薩摩琵琶と朗読の夕べ」2005)や「体で感じる能の世界」(「松江・能を知る集い」2004,2005)のように,仮のつもりで書いたものが,そのまま世に出たことも過去にありました.さて今回はどうなりますやら.

2006年2月14日

おチョコもろた

もらったチョコレイトの写真

この味を ンマいとワテがゆうたから
今日14日 おチョコ記念日

瓦町

えー,おそ松さま(笑).

食べること方面のお仕事してるねーちゃんからもろた,手作りおチョコを写真でパチリ.写ってるのは,フクロからチョコっとつまんで取り出した一部でござい.さすがにこれで全部ってこたぁござんせん(笑).

お豆さんにコーティングしてあったり,マシュマロが入ってたりしてて,いろんな食感味わえるし,香りもええし.もぐもぐ.ほんのこて,うまか~.ねーちゃん,ありがとよ~.

でさ,ナンでもどっかにオカラ使ってるんだって.どんな効能出してんだろ? 味じゃわからんかったんで,裏方で働いてんかニャー? ただ今ねーちゃんに問い合わせ中ナノダ.

2006年2月13日

第30回島根広告賞 作品展示

「春の夜の夢:薩摩琵琶と朗読の夕べ」プログラムの表紙の画像

昨年1年間に島根県内で制作された広告作品を集めた,第30回島根広告賞の作品展示が14日に始まります.

昨年の第29回に引き続き,私がデザインした作品も展示されます.今回は,2005年4月に宍道湖の北岸を見下ろす古い民家で催された「春の夜の夢:薩摩琵琶と朗読の夕べ」の広告を出品しました.

前回同様,展示のために特製パネルを作成しましたので,すでに広告を御覧になった方でもお楽しみいただけるかと思います.

日時
2月14日(火)-19日(日)10:00-18:00
場所
島根県立美術館ギャラリー(松江市袖師町)
入場料
無料
主催・問い合わせ先
島根広告協会
電話:0852-32-0503

2006年2月11日

殿町オトノマチ

「殿町オトノマチ」チラシの画像

石川陽春が広告デザインを担当した催しが,明日始まります.

空洞化の進む松江市殿町地区に賑わいを取り戻すための実験を兼ねた催しです.“若者”を主なターゲットに,地元のミュージシャンによるライブのほか,カフェ,ショップなどが開かれます.

明日は朝が早いので,作品解説は後日.

日時
2006年2月12日(日),18日(土),19日(日)
場所
山陰中央ビル2階(松江市殿町.みしまや中央店の上階)
問い合わせ先
殿町賑わい創出実験実行委員会
事務局:松江市都市計画部市街地整備課
電話:0852-55-5525

2006年2月10日

2005 45th ACC CM FESTIVAL 入賞作品発表会

今度の日曜日2月12日の松江市殿町界隈は,私が広告デザインを担当した「殿町オトノマチ」初日(山陰中央ビル2階,12:00-)のほか,もと料亭だった建物の改修を前にした「蓬莱荘ちょっとだけお別れイベント」(11:00-15:00),「高野山の声明:御論議」(島根県民会館大ホール,16:00-)と,何だか大変なお祭になりそうですが,私は自分の仕事と半分くらい関係のある以下の催し物へ,勉強に出かけます.

ACC CM FESTIVALは,日本国内で過去1年間に制作されたTV,ラジオのCMを対象とする広告賞です.毎年秋に賞の発表があり,次いで入賞作品発表会が全国各地を巡回します.松江での発表会は2月中旬の恒例になっています.

中でも「地域テレビCM部門」は,限られた地方でしか放送されないCMが多数見られる貴重な機会,日本列島はせまくなったと言われて久しいですが,意外と各地のお国柄がうかがわれます.

普段は銘々TVやラジオで何となく見たり聴いたりするCMに,真っ暗なホールで約600人が一斉に向き合い,ホール全体が笑いに包まれるという,何とも異様な空間(笑)を味わえることでしょう.

日時
2月12日(日)13:00-16:00
場所
島根県民会館中ホール
入場料
無料
問い合わせ先
山陰放送松江支社
電話:0852-211-4306

2006年2月 1日

『プロフェッショナル』の佐藤可士和を見て

『プロジェクトX』の後継番組『プロフェッショナル:仕事の流儀』を,昨日初めて見ました.アート・ディレクターの佐藤可士和さんの仕事ぶりを取り上げていました

佐藤可士和さんと言えば,クリエイティヴ・ディレクターの多田琢さんと組んだ,SMAPのアルバム『Smap』(2000)に始まるCIの手法による広告で,私はビックリ仰天したクチ.赤・黄・青の3色の面に区切った長方形の上に,Futuraという欧文書体で組んだ「Smap」ロゴを乗せた,至ってシンプルなヴィジュアルで,1枚のアルバムだけでなくSMAPの存在そのものを印象づけたアレです.「Smap」ロゴは,後に続く数々のアイテムにも引き継がれて,「Smap」という一大ブランドが日本中を席巻していったかのような様相を呈しました.当時の記憶は今なお鮮烈です.

番組中,「(商品の)本質をつかむことが大切」という発言がありました.「商品」は「テーマ」と置き換えてよいと思いますが,デザインという仕事の核心を言い当てた言葉です.どんなに見た目オシャレにまとめ上げようとも,テーマの本質を的確に把握しない限り,テーマにふさわしい表現の獲得にはつながりません.具体例を挙げるのはさしさわりがありますが,私自身の失敗作と呼ぶべきものは,例外なくテーマの本質に迫りそこなっています.その代わり,技術的には稚拙さが目立つ作品であっても,本質を掘り当てていれば,おのずと評価してもらえるものです.まあ,評価とフトコロの一致は一筋縄ではいかないようですが(笑).

佐藤さんは「本質をつかむ」ことの大切さに気づくまでには,転機となった作品として紹介された「HONDA STEP WGN」の,ワゴン車に乗って家族で遊びに行くよろこびと楽しさを表現した広告にたどり着くための,それなりの時間と経験を必要としたようですが,そのころの佐藤さんの置かれた状況に近いのが,現在の私なのかも知れません.

「決断するときは,最も困難な道を選ぶ」……私もそうありたいものです.(佐藤さんの仕事は,アート・ディレクターの範疇にはとどまらず,宣伝活動全体にかかわる決断を求められるクリエイティヴ・ディレクターと見なすのがふさわしいのでしょうが)クリエイティヴ・ディレクターにかかわらず,デザイナーやアート・ディレクターを志す人たちは,一般にはAだと思われているものを,Bとして見ることのできる目と,加えてBを形にするための方法や技術,あるいは構想を,おぼろげながらも持っているのではないでしょうか.世間一般の価値観をなぞるだけで事足れりとしないからこそ,この道を選ぼうと心に決めたはずです.そうでなければ,大学院留年してまで人生の軌道修正しようなんて考えませんでした.ええ,そうです,私のことです.

デザイナーとして心にとめておきたい言葉がいくつも出てきた番組でした.何だか『たぬき家小春の懸賞生活』並みに褒めちぎったようなことを書きましたが(笑),共感してしまったんだから仕方ない.