
市民団体「まちかど研究室」(島根県松江市)が制作している「どこでもバスブック」は,地域のバス路線図や時刻表,バスに関するお得な情報を,バス会社の枠を越えて1冊に網羅する路線バスのガイドブックです.
私は2005年春から表紙のデザインを担当しています.シリーズ全体で統一感を持たせながら,圏域版別にデザイン上の特色を出しています.


シリーズ発祥の地・松江のバスブックの表紙も,2005年夏の第5号から担当することになりました.
松江版の「顔」は,『知られざる出雲そば』の挿絵を手がけた園山詠子さんによる,「バスのある松江圏域の風景」のイラストレイションです.松江に在住し,圏域各地に取材した数々の著作をのこした「へるんさん」(小泉八雲:ラフカディオ・ハーン)が,没後100年を過ぎたというのに,なぜか現代にバスの利用客,あるいは地元住民のひとりとして出没する予定になったのは(笑),園山さんの提案によるものです.
安来版で基礎を作ったシリーズ全体のタイポグラフィが,さまざまな書体がうごめく賑やかなものであることから,色彩計画はシンプルにまとめました.毎号変わるメインの1色に加えて,サブの1色と紙の白色を基調とした,フルカラー印刷とは思えないシロモノです(笑).園山さんのイラストレイションも例外なく,もともとスミ1色の作品なのですが,印刷ではスミではない「メインの色」を充てることで,各号の表紙の印象をより大きく変える試みを展開していきます.

掲載対象である安来市広域生活バスが,車体の色にちなんで「イエローバス」と呼ばれているということで,Yellow Pages風に黄・黒2色を中心とする色彩計画をとりました.役立つ情報を盛り込む,という大まかな点では,Yellow Pagesと編輯上の共通点もあろうかと思います.
中央に並ぶ色とりどりの番号には,思わず「これは何?」と注意をひかれるかも知れません.安来版誕生と同時に,路線別に番号と色が割り当てられることになっていました.イエローバスにとって節目となるこの出来事をわかりやすくアピールしようと考え,路線番号/色に路線名を添えて,整然と配しました.その下には,解説を兼ねて本誌からの引用を添えています.
バスの写真の下には,これも本誌からコラム「運転手の声」を引用しました.本誌の内容がにじみ出るような「雑誌の顔」としての表紙や,本誌の引用や表紙独自のテクストを表紙のデザイン要素として活用する「読む表紙」は,現代日本を代表するデザイナーのひとりである杉浦康平さんやその系譜上のデザイナーが開拓した手法です.私自身,「雑誌の顔」や「読む表紙」に導かれて手に取った本が少なくありませんので,この手法を私なりに受け継ぐことで,本との新たな出会いの場を作っていけたらと思います.
なお,安来版は,時刻表(写真右)を別冊とし,バスブックに挟み込む形で配付されました.
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