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2005年12月25日

この冬は『北越雪譜』読もっかな

何年前だったか,TVの歴史番組で,鈴木牧之『北越雪譜』(初編1837,二編1841)刊行の経緯を取り上げてたノダ.越後国塩沢(現・新潟県南魚沼市)で縮(ちぢみ)の仲買業を営み,商用で江戸との往来があった牧之(1770-1842)が,温暖な地方に住む人には想像もつかないよーな雪国の厳しい暮らしぶりを紹介する書物を,構想,版元探しから執筆まで40年近く費やして出版にこぎつける.で,初編発刊間もなく,江戸で700部売り上げるベスト・セラーになったノダとか.

そんな気の遠くなるよーな歳月かけてまで,越後の商人が世に出したかった雪の本ってどんなモノだろか? 長年の暖冬で,こちら簸川平野は雪と縁の薄い土地になっちゃっただけに,タヌぼーにとって雪ってのは,せいぜい雪あそびの雪か,時々交通に影響を及ぼす雪くらいなモノでしかないノダ.いわば牧之の時代に生きた江戸の住人のよーな目で,『北越雪譜』にゃキョーミ持ってたノダ.

だけどこのところの大雪で,屋根から落ちた雪の下敷きになって人が死んだとか,鉄道が終日運休したとか,そんなニュースが連日伝わる今日コノゴロ.タヌキ小屋あたりもたびたびの積雪.気象庁は冬の予報を「暖冬」から「20年ぶりの寒い冬」に修正したそーだニャ.いつもの冬よりちょっとだけ身近に雪国の気配を感じながら,この冬は『北越雪譜』を読んでみよっかニャ,なんて思うノダ.

今,岩波文庫版をパラパラめくってるノダ.初編冒頭では,くもりたる雲冷際に到りまづ雨となる。この際冷際の寒気雨を氷すべき力たらざるゆゑ花粉をなして下す、これ雪なりと,まずは雪を定義して,牧之による雪の結晶のスケッチまで掲げつつ,さながら“雪の科学”.モチロンこれはほんの出発点に過ぎなくて,字面で冬のキビしさが充分伝わってきそーな「雪中の洪水」「雪中の葬式」,土地の伝承・伝説とおぼしき「斎の神勧進」「両頭の蛇」「鶴恩に報ゆ」…….見出しとか,主に山東京水(京山の子.京伝の甥)の筆になる挿絵とか見てるだけでも,雪と雪国のすべてを書き尽くしそーな勢いが伝わってくるノダ.

北越雪譜
北越雪譜
posted with amazlet on 05.12.25
岡田 武松 鈴木 牧之
岩波書店 (1978/01)

引用者註

『北越雪譜』からの引用のうち,一部の漢字は仮名に改めました.

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