狂言を楽しむ:茂山一門の世界[2]2006年鳥取公演「猿聟」
(このエントリーは,2006年1月に開催される「狂言を楽しむ:茂山一門の世界」鳥取・米子公演を紹介するシリーズの1本です)
猿聟(さるむこ)
鳥取公演
2006年1月19日(木)
鳥取県民文化会館梨花ホール
- 聟猿
- 茂山千三郎
- 舅猿
- 茂山千之丞
- 太郎冠者
- 茂山逸平
- 姫猿
- 茂山茂……ほか
狂言には,新婚の聟が舅のもとへ挨拶に行く「聟入り」という儀式を扱った曲がいくつもあります.勿論それらは人間の世界の話なのですが,「猿聟」は曲名の通り,登場するのは全員猿で,名乗り,道行,小謡以外は,全部“猿語”によるやりとり(笑).「キャーキャーキャー」「キャキャッ,キャキャキャキャキャキャ……」といった具合です.しかも聟猿は,嫁猿や一族の猿も数匹引き連れて訪ねるのですから,大変にぎやかなことになります.
聟入りを扱った曲には,「二人袴(ふたりばかま)」「船渡聟(ふなわたしむこ)」など,儀式をめぐるおもしろおかしい騒動に光が当たるものが多くありますが,「猿聟」ではつつがなく聟入りが進みます.それが“猿語”で繰り広げられるという一点に,見る者はクスリとさせられます.しかし全体としては,聟入りという儀式が湛えるおめでたい雰囲気こそが,この曲第一の持ち味です.
狂言で演じられる聟入りは,セリフや話の進行に定まったパターンを持ちますから,聟入りを扱った他の曲を知っていると,頭の中で“猿語”を同時通訳しながら愉しむこともできるでしょう.