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2008年2月 6日

消滅の危機にある《大阪中央郵便局》

1920年代に流行した「分離派」の建築,1930年代に擡頭したモダニズム建築の牽引役であった逓信省営繕課.中でも中心的な役割を果たした吉田鉄郎(1894-1956)の代表作が,東京駅前と大阪駅前という日本の二大都市の玄関口に建つ郵便局,《東京中央郵便局》(1931竣功)と《大阪中央郵便局》(1939竣功)です.現在,両局舎ともに再開発の計画が持ち上がり,存続が危ぶまれています.

今日はこういうニュースが出てきましたので,《大阪中央郵便局》の話を少し.

osakacentralpostoffice1.jpg

撮影:2000年3月

中国で戦線が拡大していた時節柄,防空のために採用されたと言われる外壁のタイルの灰紫色が,いささか地味な印象を与えるのは否めませんが,立ち止まって観察すると,柱と壁梁のグリッドだけで構成されたと言ってもよい架構の美を見いだすことができます.伝統的な木造の日本建築に見られるような,柱が壁面に表出する真壁構造を,鉄筋コンクリートとガラス窓で実現した,日本のモダニズム建築の名作に数えられています.実際に局舎の前に立ちますと,当時のコンクリート建築にしては重厚感や威圧感はなく,軽快な印象がありました.ちなみに真壁構造に対して,外壁で柱を隠したのが大壁構造です.

グリッドの中を満たすガラス窓をよく見ると,階を重ねるごとに窓割りの比率が5,4,3,2と規則的に変化しています.比例の美とリズミカルな美が共存しているわけです.

これほどまでにシンプルなファサードを持つ大建築はまだまだ少数派に属してはずの1930年代,商都大阪といえども,この局舎の出現は鮮烈であったろうと想像します.1930年代を象徴する大阪の顔のひとつとしても,日本におけるモダニズム建築の時代の幕開けを告げた記念碑としても,《大阪中央郵便局》の存在は顧みられてもいい.そんなことを思います.

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