制作実績

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2006年10月に島根県松江市の大根島で開催されたアート・プロジェクトの活動記録集です.約50頁にわたり,プロジェクトの全容を,誌上ギャラリーや豊富なテクストで紹介しています.非売品.
 
『どこでもバスブック』シリーズ以外では久々に,本格的な頁モノのデザインを,表紙から本文まで担当しました.そもそも高校・大学時代から雑誌の編輯・執筆に当たってきた延長線上で,この仕事に入ったのですが,そのわりには頁モノのデザインの仕事は多くありません.本当に今回はありがたい機会をいただきました.
 
「昭和の一時代を生き抜いた写真屋」の建物を会場としたアート・プロジェクトということで,レトロスペクティヴな誌面デザインを期待する向きもあったかも知れませんが,ゴシック体のかな書体にクラシカルな味わいのものを取り入れたくらいで,全体的には現代的でシンプルで,ニュートラルな仕上がりです.旧写真館の公開と写真館主の写真展だけでなく,出雲地方に拠点を置く5人のアーティストの作品展も,プロジェクトの大きな柱でしたから,誌面全体をひとつの強い個性で貫くのは似つかわしくないと判断したわけです.たっぷりととった余白,明朝体を中心とした縦組みの文字組みで,静かに誌面は進んでいきます.
 
また,私がかかわったものにしては珍しく,写真中心の頁が多く,巻頭カラーで見開き16頁に及びました.表紙と裏表紙だけでも13点の写真が登場しています.写真を図版として扱い仕事の方が圧倒的に多い私にしてみれば,ちょっとした(どころではない)挑戦でした.
 
紙は,表紙と本文で厚さこそ違いますが,同じ銘柄,同じ色の上質紙を用いました.製本に使用される紙としては安価な部類に入るものですが,サラリとした手触りが心地よく,印刷された文字や写真にもしっとりとした質感が現れました.手に取る人,読む人の記憶に,かすかにとどまる風情が出たのではないかと……思います.

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